静かな爆弾 吉田修一
耳が聴こえない響子と出会ったテレビマンの俊平の話。
障害を乗り越えて恋に落ちるありがちな感じかと思ったら、そういう訳でもなかった。よかった。
優しい人がすきっていう前提が自分の中で当たり前のようにあるんだけど、優しいってどういうことなんだろうって偶にかんがえる。
むずかしくてだいたい答えが出ないんだけど、読んでてこういうことかなってストンと落ちる部分があった。
両親に、耳の聞こえない恋人として響子を紹介するのではなく、響子という恋人の耳が不自由なのだと伝えたい。
っていう俊平の思考。
そういう思考回路で人のことを考えられるとこ、すごいすきだとおもった。
わたしもそう想われたいなあって。
わたしの思う優しいは、行動として優しいっていうより、思考なのかも。
それが行動に現れることもあるのかもしれないけど、まず思考。
考えてることなんてわかんないんだけどね。
そういうような感じのことを思ってるって思いたいと思ったらもう好きなんだろうな。
すきが先か、優しいことを信じるのが先か。
にわとりたまご問題みたい。
あと、印象に残ったとこは、
野良猫が実は神様かもしれないから用心、用心。施してやるか、施させてもらうか。
のところ。
ほんとに響子のせかいはおもしろい。
耳が聴こえないと言うことを除いても。素敵な子。
他には、俊平が響子に一緒に暮らそうって言って断られた時に感じた気持ち、すごくわかるなあとおもった。
自分から望んでるはずなのに、実現されなくて安心するって言う。
ほんとに勝手なんだけどわかっちゃう。それに気づかれたくないってとこも。
あと、昔なんである一人の人だけが人気なんじゃなくみんな選ばれるんだろうって疑問だったんだけど(悪くいうと、なんで大体の人が結婚できてるんだろうみたいな)、それがやっとわかった。
小さい時はクラスで一番人気の子がダントツでいるみたいな、すごい偏ってたような感じだったけど。
パズルのピースみたいに。生きてる間に形が変わって行って、合う人も変わっていくんだな。
だから、以前は魅力的に思ってなかった人でもピッタリ合う形になっていったりする。
一つ合わない部分があっても一緒にいるうちに同じピッタリ合う形になってくということもあるし。逆に、形がずれていって違和感を抱くようになることもある。最近両方の可能性を感じている。
一件不自由な響子と一緒にいたいと感じる俊平の感覚から、なんとなくそんなことを思った。