初恋温泉 吉田修一
温泉にまつわる短編集。
まず表題の初恋温泉。
自分が一番幸福な時間を見せたい相手にその時言ってもらいたいことってなんだろう。
重田が彩子を好きっていうか、、と言ったことに続けて話したこの表現が心に残った。
頑張ったね、とかはしっくりこないって重田は言ってたけど、私はそう言ってもらって嬉しかったことが思い当たった。
普段褒めたりしない相手が割とものすごくどん底の時に明るくケラケラわらって話してたら、ほんとすごいねって言ってくれて。その瞬間に幸福な気持ちになった。
男の人は自分の弱いとことかを見せたくないのかな。こちらとしては見せてくれないとちょっと寂しいのに。
だから彩子が離婚したくなった気持ちもわかる。
なんか不安なんだよね。
この間男友達に専業主婦は嫌なのって聞かれて、対等な関係で居られなくなるから私はやだって答えた時やや違和感があったのはこういうことかも。
単純に自分の存在意義がどこにあるのかわからなくなるというか。
旦那さんのためになってるとこが思い当たらないのに、自分だけ与えられてる状態にいたたまれなくなりそうというか。
自分が相手の輝いてるところを見てることだけで相手が喜ぶだなんて信じられないし。
二人の出会いから再開までのエピソードは可愛らしくて、初恋温泉っていう題名に納得できた。
白雪温泉は最初不気味な話だと思ったらそんなことなかった。
二人の関係性よいなあ。きちんと現実味がある。
初恋温泉の彩子の幸せな時間をつなぎ合わせたからって幸せとは限らないという言葉がまさかのこっちで効いてたなあ。
温泉のお話が続くけど、全部雰囲気とか話の内容が全然違って、バラエティに富んでいた。